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39 刑法第三十九条(映画)
★★★☆☆(10/10正午まで)

刑法第三十九条をめぐる、社会派問題作・・・というのがたぶん、この作品の本当のところなんだと思う。でも、実際そういう目でこの作品を観てしまうと、粗が目立ち過ぎて面白くない。この作品の見所は、まずは周到なプロット、暗いトーンで見事に統一された演出、そして何よりも、今にも井戸の傍でお皿でも数えだしそうな鈴木京香だ。

サスペンスとしては、まずまずの出来だと思う。細部まで練り込まれた脚本は素晴らしいのだが、シーンごとの噛み合わせの悪さが足を引っ張っているのが悔やまれる。しかし、途中でほぼネタをばらしているにもかかわらず、最後まで緊張を保って観客を惹きつけるところはさすがだ。演出は、本当に素晴らしい。役者の目つき、喋るテンポから些細な仕草に至るまで、周到に統一感を持たせて、見事に陰鬱とした暗い世界観を作り出している。画面の色合いと演技の相乗効果も完璧だ。好き嫌いはあろうが、これは見事だった。そして鈴木京香。僕は彼女の大ファンなので、まあ個人的な贔屓目もあろうが、それにしても可憐な病み加減だった。いつも通り抜群のネチネチ感が冴えまくっていた岸部一徳に、あまり見たことのない病んだ鈴木京香の演技が実にハマッていた。総じて、サスペンス映画としてはなかなか見応えがあると言えるのではないだろうか。

しかし、社会派の作品という意味ではどうか。妙な社会正義を振りかざしている割には、大元にあるはずの問題意識に粗があり過ぎる。映画の最後に流れるテロップからも分かるように、この映画の問題意識は「心神喪失者ノ行為ハ之ヲ罰セス 心神耗弱者ノ行為ハ其刑ヲ軽減ス」という刑法第三十九条の理念そのものであったはずだ。ところがこの映画で取り扱われた問題は、結局のところ刑法第三十九条の理念ではなく、単に精神鑑定という手法の危うさに過ぎない。精神鑑定に限らず、医者は誤診するものだ。そして当然、刑事訴訟におけるいかなる判決にも、常に冤罪の危険は付き纏う。しかしこういった危険性は、刑法第三十九条の理念的な正しさを直接脅かすものではないはずだ。僕は法律の専門家ではないし、まして刑法のお世話になったことなどはないから(もちろん、これからもなる予定は無い)、もとより法的な問題を指摘したいのではない。ただ、理念的に重要なテーマを扱っている以上、結論に至る過程に飛躍があるのは見過ごせないと思うまでのことだ。

実を言えば、僕はもともと社会派の映画というものを好まない。なぜなら、主張が鼻につき過ぎて、映画を映画として楽しむことが出来なくなってしまうからだ。その意味では、この作品のテーマがそもそも僕の好みでないことは間違いない。それが故に、書かなくてもいいような批判まで書くことになった。しかし、これだけ相性の悪い作品を僕は最後まで楽しめたのだ。それこそ、この作品の素晴らしさではあるまいか。或いは、ただの鈴木京香効果かも知れないが。

DVD:「39 刑法第三十九条」
書籍:「39 刑法第三十九条」
| thinkingreed | 映画 | 04:30 | comments(0) | trackbacks(0) |









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