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コウノトリの歌(映画)
★★★★☆(10/28正午まで)

画面いっぱいに広がるヴェトナムの貧しい村々とジャングルは、目を見張るばかりに美しい。けれどその美しさは、こらえ切れないほどの哀しみをたたえている。とにかくこの作品は、景色が雄弁であった。恐らく青を重ねていると思われる映像は、どこか雨にけぶったような切なさで、観るものに語りかけてくるのだ。

ベトナム戦争を背景に、過酷な時代に生きた人々の懸命な姿を描いた心に響く物語。世界各国で絶賛され、ミラノ国際映画祭では最優秀作品賞を受賞。シンガポール人のジョナサンとベトナム人のグエンが共同監督し、ベトナム人としての視点から、ベトナム戦争を戦争映画としてだけではなく、人間味溢れるヒューマンドラマとして丁寧に描き上げています。戦時下に生きた人々の悲しみを静かに描いて、観る人に戦争の意味を問いかけます。(GyaOより)

思うにこの作品は、なにか強い信念によって貫かれている。それは米国を非難することでもなく、ヴェトナムの舐めた辛酸を強調することでもなく、恐らく戦争の悲惨さを訴えることですらない。作品の冒頭で語られる言葉を引用すれば、それはきっとこうだ。「人間は殺しあうために生まれたのではない。戦争とは異常なものだ。」

言うまでもないことだが、「戦争は異常である」という認識は全く普遍的でないどころか、歴史はむしろ逆のことを示唆している。そしてそんなことは、監督も十分に理解しているはずだ。なにしろこの作品自体が、戦争映画なのだかから。それでもなお、この作品は確信に満ちてこう訴えるのだ。「戦争は異常である。なぜなら人間は、本来殺しあう生き物ではないのだから。」と。

過去と現在を目まぐるしく行き来し、複数の人生が同時進行的に交錯する物語は、この一貫した信念に貫かれることで同じ色合いを保っている。現実の世界では非常識とさえ映る「戦争は異常だ」という認識の正当性を、この作品は映像を通して証明しようとしているのだ。

それが映画的手法として相応しいのかどうか、僕には分からない。ただ少なくとも、この作品が僕の心に重く静かに響いてきたことだけは、認めないわけにはいかないと思うのだ。


DVD:「SONG OF THE STORK コウノトリの歌」 / 「季節の中で」(ベトナムの都会を舞台にした映画)
書籍:「ベトナム戦争と平和」 / 「ベトナム戦争―誤算と誤解の戦場」
| thinkingreed | 映画 | 03:50 | comments(0) | trackbacks(0) |









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